お祭り騒ぎだったね。 グリスウォールに向かう列車の中じゃあ……そういや知ってるか？ モンテブリーズ線が復旧したのだって、南十字星のお陰なんだぜ。 そいつを使って、俺たちはグリスウォールまで乗り込んだってわけさ。 まあ、その列車の中じゃあ大騒ぎだったよ。 南十字星さえいれば、俺たちは無敵だ！ そう思ったね。
なにせ、あの、でっかくていきなり消えちまう飛行機……グレイプニルだっけ？ あいつが消える瞬間を見たことがあるか？ 俺は見たぜ。驚いたね～。ほんとにス～ッと見えなくなっちまうんだからよ。 あんなのがいきなり現れたんだ。あっという間に、オーレリアを奪われたのも、 まあ仕方ないよなあ。
そんなとんでもない奴を、南十字星は沈めちまったんだ。いてもたってもいられ なかったよ。みんな同じ気持ちだったんだな。 俺が声を掛けたら、食い物屋やら運送屋やら大工やら、みんな集まったね。 あっという間に、オーレリア解放同盟の出来上がりだ。 一介の市民の力を見せ付けてやるって、みんないきまいてたよ。最高の仲間たち だろ。
おっと、すまない。また話がそれちまった。
で、グリスウォールでのことだけど、いや、参ったね。 グリスウォールに乗り込んだまでは良かったんだ。 なにせ、そこにいたはずのレサスの軍部はいつの間にか姿を消していて、ザコが 残っていただけだったからな。だがその後がいけねえ。 あっという間にレサス軍に包囲されちまって、そこに南十字星が来たわけだ。
俺たちは、南十字星を狙うレーザーを止めようと思ったんだよ。ちょっとでも、 あいつの力になってやりたいじゃないか。 そうしたら、どういう仕組みになっているのか、街を護るゲートが開いちまった んだよな。思わず叫んじまったね。 「冗談じゃねえ！ これじゃ丸見えだぞ、なんてこった！」 ってな。
おまけに、街に向かってミサイルが飛んでくるし……公園に落ちたミサイルとき たら、音はでかいし、熱いし、爆風でいろんなものが飛んできやがるし、大変 だったよ。正直、めまいがしたね。俺たちも、もう少しで逃げ出すところだったさ。
けどよ、そんな中でも、南十字星はまったく動じないじゃないか。 次々とミサイルを打ち落としていくんだぜ。まるで、本物の鳥みたいに自在に飛 びまわってな。
…ああ。はっきりと分かったよ。 あんなすごい腕を見せられて、それでも余裕で笑っている鳥の絵……エンブレ ムって奴か。まあ、こいつは有名だから言うまでもないよな。 あの、「何も心配するな」って言っているような鳥と目があった時に思い知らさ れたんだ。 戦場で俺たちの出る幕はなかったんだ、ってな。
だけど、ゲートを開いちまったのは、俺たちの責任だ。せめてそれだけでも、ど うにかしたいじゃないか。このままじゃ、終われねえと思ったね。 ゲートの変わりにトラックを置こうとしたり、レサスの戦車が通れないように、 道の真ん中で火を燃やしたりいろいろやったさ。 まあ、トラックはとっくにエンジンが止まっていてちっとも動かなかったし、 ちょっとした火くらいじゃ、戦車はびくともしてなかったけどな。アッハッハッ ハッハッハッハッ。
後は、ご存知の通り、南十字星の独壇場さ。気付いたときには、ミサイルの攻撃 は止まっていたね。 もちろん、全部南十字星が防いでくれたのさ。
「南十字星！ 後は俺たちに任せろ！」 思わず叫んだ言葉に、仲間が応えてくれたよ。 「この街は、俺たちの手で復興させてやる！」 やっぱ、奴らは最高だね。これからも俺たちは、オーレリアのためにがんばるよ。
おいおい、そんな目で見ないでくれ。もう、無茶なことはしないからさ。 いや、ほんと、反省してるって。
けどよ、ほんとに期待しててくれよ。 レサスの奴らにメチャクチャにされた街を、立て直さないといけないからな。 これからいろいろな物だって、必要になってくるしよ。 もう、物資の輸送や建物の再建をはじめてるんだぜ。食い物屋やら運送屋やら大 工やらが、みんな仕事のツテを最大に生かしてな。今じゃあ、国中から賛同者が 集まってるんだ。 まあ、見てなって。 これからが、一介の市民でしかない俺たちの、本当の腕の見せ所だからよ。
～END～